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◆2004/3/14 [続発・シックスクール]子供を守るために/6
         学校、地域の枠超えて連携

   シックスクール被害を防ぐには、校舎に化学物質の放散が少ない建材を使う必要
 がある。国土交通省は昨年7月施行の改正建築基準法に、厚生労働省が指針値を
 設けた13物質のうち、クロルピリホスとホルムアルデヒドの規制を盛り込んだ。
   だが、調布市立調和小学校などで原因となったトルエンも含め、ほかの11物質に
 は建築時の法的規制がない。規制が準備されているのはトルエンとキシレンだけ。 
これらを多く含む建材を使わないように業者に指示するかどうかは、自治体が独白 
に判断している。
   さらに完成後の施設については、文部科学省が学校環境衛生基準で、ホルムア 
ルデヒドなど4物質(4月から6物質)の測定を毎年行うことを定めているが、これも実 
施は事実上、白治体の判断に委ねられている。

   測定で有害な化学物質濃度が高かった場合、校舎を使わない決断も重要だ。昨 
年夏に全国の自治体が行った測定では、対象施設の何割かで基準値を超えたのに 
「健康には問題ない」 「換気すれば大丈夫」として施設を使うケースがあった。
   こうした実態に対し、NPO法人「シックハウスを考える会」の医師らは昨年11月、 
 行政や学校関係者の認識不足を指摘し、文科省に全国的な実態調査や教育委員 
 会に対する研修、情報提供を求める要望書を提出した。
   「国や都道府県などの指示待ちの自治体が多い。住民の健康を守るのは本来、 
自治体の仕事のはず」。同会の上原裕之理事長はそう指摘する。

   こうした中、都は昨年12月、世田谷泉高のシックスクール問題を受けて、都立学 
 校での対策手引きを策定した。化学物質濃度を国の基準値の半分以下とするのを 
目標にするなど、国の対策より踏み込んだ内容。工事が原因で化学物質濃度が基 
準値を超えた場合、業者の責任で改善させるなど、施設の設計・施工マニュアルも  
作成しており、今月19日に都立学校関係者に配布するほか、区市町村にも参考とし 
て示す。

   一方で、シックスクール被害を受けた子供の保護者は、学校や地域の枠を超えて
 連携し始めた。
  「症状を訴える子供をどうしたらいいですか?」「行政への対策要望の方法を教え 
て」。調和小の児童の母親は、先に問題が起きた長野県・塩尻西小の保護者と電子 
メールを交換してアドバイスを受けた。最近は自分たちの経験を、同じ悩みを抱える 
全国の親子に発信し、多い日には数十通のメールをやりとりする。
   昨年7月には、江東区立元加賀小や世田谷泉高の保護者約10人と初めて集ま  
り、意見交換した。「どこのの学校でも起こり得る問題。学校や行政任せにせず、今 
は症状が出ていない子供の保護者も含めて関心を持ってほしい」。親たちは今、、  
そう考えている。=おわり
  この連載企画は、太田裕之が担当しました。
  ◇     ◇    ◇
  シックスクール問題やこの連載企画についてのご意見、情報をお寄せください。手
 紙は〒192-0063 八王子市元横山町2の22の9、毎日新聞八王子支局、ファクスは 
0426-20-7764、メールアドレスは hachiouji@mbx.mainichi.co.jp です。


◆2004/3/12 [続発・シックスクール]子供を守るために/5 
         自治体の対応で負担に差

   シックスクール問題を抱える都内自治体の財政負担は、原因となった新築、改築
 校舎の使用時期や業者からの引き渡しのいきさつによって大きな差が出ている。

   調布市の主婦、福田次子さんは同市立調和小学校の問題で「責任は業者側にあ
 る」として昨年4月、市が支出した関連経費を設計、施工業者に賠償させるよう市側 
に求める住民監査請求を行った。市が昨年末までに負担した経費は▽化学物質の 
濃度測定1400万円▽児童の健康診断と受診費165万円▽窓の改修工事88万円− 
などで、総額約1650万円。しかし、福田さんの請求は「新校舎の引き渡しに国の環  
境基準違反はなかった」として退けられた。

   その理由はこうだ。市は02年8月に、業者から新校舎の引き渡しを受けた。この時
 点で校舎内の有害化学物質は、文部科学省が「学校環境衛生の基準」で同年2月に
 定めた基準値を上回っていた。さらに、同基準は「濃度が基準値以下であることを業
 者に確認させたうえで引き渡しを受ける」と規定していた。
   ところが、この基準は02年4月以降に契約された工事を対象にしているため、01 
 年3月に契約した調和小は適用外で、「業者に責任は問えない」という判断だった。

   一方、同様のシックスクール問題が起きた都立世田谷泉高、江東区立元加賀  
 小、墨田区立八広小の3校は、それぞれのミスともいえる対応のまずさから、約1200
 万〜2200万円もの経費を都や区が負担している。工事契約はいずれも02年4月以 
 降だが、文科省基準に反して化学物質が基準値以上のまま校舎の引き渡しを受け
 てしまったため、業者に賠償要求する予定はない。

   これに対し、昨年8月に新校舎が完成した西東京市立けやき小では、施工業者の
 測定で化学物質濃度は基準値以下だったが、市が独自に測定を行い、基準値の2 
 倍のトルエンを検出。校舎の使用開始を延期して被害を防いだ。さらにその後、下 
 請け業者がトルエン含有量が多い、指定外建材を使ったことを突き止め、対策や使
 用延期で生じた経費約1600万円を業者に負担させている。

   「校舎は子供の健康を害さない建物であるのが当然で、調和小の新校舎にはミス
 があった。国の基準がどうあれ、業者も責任を免れない」。監査請求を退けられた福
 田さんはそう主張して、東京地裁で調布市長を相手取った住民訴訟を起こし、係争 
中だ。=つづく

◆2004/3/11 [続発・シックスクール]子供を守るために/4 
         治療費負担に難色示す… 

   「裁判を起こしてもらうしかない」。調布市教委側の突き放すような言葉に、同市立
 調和小でシックハウス症候群と診断された児童6人の保護者は「無責任だ」と反発し
 た。市教委は昨年秋、「治療法が未確立であり、支払う根拠がない」などとして、診断
 後の児童の治療費などの負担に難色を示した。その後、保護者が請求すれば、校 
 舎と症状の因果関係を医師に照会するとしたものの、関係が不明なら支払わない姿
 勢を変えていない。

  児童6人は同症候群から「化学物質過敏症(CS)への移行途中」へと症状が悪化 
 したが、CSの医学的解明は一層難しいだけに、行政による治療費負担は当面期待
 できない。
   市教委から調和小の環境・医学調査を委託されたNPO法人「シックハウスを考え 
 る会」の笹川征雄医師も「校舎によるシックハウス症候群を起こした疑いが強いが、
 化学物質濃度が下がっている中での今の症状との因果関係にまで踏み込むのは難
 しい」と話す。 だが、シックハウス問題を巡る訴訟では、02年12月の札幌地裁判決
 が、原告の損害賠償請求こそ認めなかったものの、CSを訴える患者の存在を認  
 定。同問題に詳しい秋野卓生弁護士は「法廷では、CSの概念は認められている」と
 する。

   さらに今月2日、大阪の私立高の元在校生が「CSへの配慮がなく、通学できなくな
 った」として学校に慰謝料の支払いを求めた全国初のシックスクール訴訟で和解が 
 成立。学校側が症状への理解不足を認めた。
   治療費だけでなく、日常生活の中で有害物質を子供たちに吸い込ませないように
 するための保護者の経済的負担も大きい。天然素材の日用品や自然食品などは割
 高で、暖房には灯油が使えないため光熱費もかさむ。ある家庭は、転校のための転
 居で、約100万円の出費が必要になった。

   さらに大きいのは子供たちの将来への不安だ。調和小で発症した児童6人は今後
 も、校舎を新築・改築する学校や、理系・技術系への進学は難しい。医師からは「医
 療や美容、建築など、薬品を使う仕事には就けないでしょう」と言われた。これから、
 交友や恋愛、結婚などの対人関係で受ける制約と精神的苦痛も計り知れない。
   児童の母親が言った。「私たち親子は、一生不安を抱えて生きていかなければな
 らないんです」。=つづく

◆2004/3/9 [続発・シックスクール]子供を守るために/3 
        危険性への認識甘く 

   約400人の全校児童の2割が何らかの環境影響を受けたとされる、調布市立調和
 小学校のシックスクール問題はなぜ起きたのか。

   新校舎内の化学物質測定で基準値を上回るトルエンなどが検出されたのは、02 
年8月17日。市教委は同28日に測定結果の報告書を施工業着から受け取ったが、 
「濃度は下がるはず」と判断して2学期の9月2日から新校舎を使い始めた。
   新校舎は、PFI(民間資金活用による公共施設整備)方式で建設された全国初の
 公立学校で、各地からの視察予定が詰まっていた。使用開始から約2週間、児童は
 冷房のために窓を閉め切った教室で授業を受けた。

   9月中旬ごろから頭痛や目の痛みを訴える児童が出始めたが、学校側の保護者 
への最初の説明会は10月11日。「もっと早く知らせてくれたら休ませたのに」。娘2人 
に鼻血の症状が出ていた母親(44)はその対応に怒り、あきれた。娘2人は転校させ 
たが、「シックハウス症候群から化学物質過敏症(CS)への移行途中」と診断され  
た。

   一部の保護者は、子供たちの発症前の9月初め、市教委から独自に測定結果の
 報告書を入手。当時の校長に対し、全保護者に配布するよう求めた。しかし、学校 
 側は「不安を与えたくない」などと拒否。結局、全保護者に配られたのは説明会後の
 10月18日だった。

   約半年後の昨年4月、都立世田谷泉高校でも同様の「過ち」が繰り返された。改 
修工事を行った実習棟の全23教室のうち5教室だけで化学物質を測定し、このうちト 
ルエンが基準値を超えた3教室を使用延期にしただけで授業を始めた。生徒らが体 
調不良を訴えたため、5月15日に全室を測定すると、8教室でトルエンが基準値を超 
えた。

   シックハウス症候群と診断された3年生の健一君は、4月下旬から頭痛やけん怠 
 感を訴えた。母親(43)は原因が分からず動揺したが、5月半ばの保護者説明会で 
 初めて事情を知って憤った。同症候群と診断された3年生の真弓さんも、「危険かも 
しれない教室に自分たちを入れたなんて」と学校側のずさんさに驚き、涙が止まらな 
かった。

   「危険性と説明責任の認識が希薄だった」。「認識が甘く、保護者にも早く通知す 
べきだった」調布市教委と世田谷泉高校の担当者は、今も同じような反省の言葉を 
口にするしかない。(児童生徒の名静は仮名にしてあります) =つづく

◆2004/3/7 [続発・シックスクール]子供を守るために/2 
        求められる配慮 

   高濃度の化学物質にさらされた人が頭痛や吐き気などを訴えるシックハウス症 
 候群に対し、化学物質過敏症(CS)の人は微量の化学物質にも反応するため、一 
 般に理解されにくい。シックスクール問題が起きた調布市立調和小の長野敬弘校 
 長は「子供の体調の訴えはすべて受け入れている」と強調するが、学校生活では被
 害者の児童とその周囲にあつれきも生じている。

   昨年9月、「同症候群からCSへの移行途中」と診断された同小6年の秋子さんと 
 和雄君の2人が体調を崩したきっかけは、教諭がつけていた化粧品だった。2人の 
 保護者は再三配慮を求めたが、学校側は「教師の人権もあり、化粧品は禁止でき 
 ない」という方針。教諭が無香料の化粧品に変えても、2人は発症した。保護者の再
 要請で天然素材のものを使い始めた10月に、ようやく症状が治まった。

   こうしたいきさつもあって、教諭と秋子さんらの関係はぎくしゃくした。教諭が使う 
 マジックペンのにおいにも反応する秋子さんは、マスクを着けて自衛するしかない。 
「先生は分かってくれない」という不信感が募り、昨年暮れにはささいなことから口論 
になった。教諭も感情的になり、教頭に止められた。秋子さんはその後、教諭と口を 
きかない状態が続く。和雄君も教諭との関係が悪化し、昨年暮れから再び不登校  
児施設に通っている。

   学校側は10月、教材の化学物質や教職員が身につける物に配慮する方針を保 
護者に通知した。しかし、秋子さんの母親らは市教委に、学校で使う化学物質のリ  
ストやCSの児童への対応マニュアル作成を求めている。
   市教委は昨年4月、同小の問題をふまえ、「室内化学物質放散対策プラン」を作 
 成。化学物質の抑制や換気、児童らの健康把握や一時避難支援などについて定め
 たものの、CS対策は盛り込んでおらず、「夏までには改訂したい」としている。

   NPO法人「化学物質過敏症支援センター」(横浜市)の網代太郎事務局長は「学 
 校でのCS対策は、関係する教職員の人柄や理解の程度次第で子供の運命が変わ
 ってしまうのが現状。CSは個人差があり、マニユアルがあれば十分というわけでは 
ないが、子供が運に左右されないように、行政が整備する必要はある」と話してい  
る。(児童の名前は仮名にしてあります) =つづく

◆2004/3/6 [続発・シックスクール]子供を守るために/1 
        体と心に二重の傷  
        
  学校内で化学物質などに反応して児童、生徒らが体調を崩す「シックスクール」問 
題が、都内で広がりを見せている。都が今月中に対策マニュアルの配布を計画する 
など自治体も動きはじめた。症状のつらさだけでなく、周囲の理解不足や対策の遅 
れから、子供たちが深刻な立場に立たされるケースも少なくない。その現状を報告  
し、被害拡大を防ぐために何が必要なかを考えた。(文中の児童、生徒の名前は仮 
名にしてあります  【太田裕之】

 1年半後も消えぬ不安 調布市立調和小
  調布市西つつじヶ丘の市立調和小学校(児童数400人)の6年生、秋子さんは昨年
 5月、教室内で「香水のにおい」をかいだ直後に突然倒れた。目がチカチカして気分 
が悪く、足が動かなかった。同小のシックスクール問題が浮上したのは02年月。秋  
子さんも頭痛などが続いたが、その後、校舎内の化学物質濃度は国の基準値以下 
に下がっていただけに、症状にショックを受け、心まで深く傷ついた。

  「シックハウス症候群から化学物質過敏症(CS)への移行途中」。港区の病院で、 
そう診断されたのは昨年9月。「ごく微量の、しかも多種類の化学物質に反応する」と 
いう医師の説明に秋子さんは、5月に倒れる直前にかいだ「香水のにおい」を思い出 
した。
   調和小の新校舎は使用直前の02年8月の測定で、トルエンが国の基準値の約15
 倍、ホルムアルデヒドも約1.3倍検出された。だが、学校側は「濃度は下がるはず」と
 して使用を始めた。

   秋子さんはすぐに発症し、10月半ばに「急性薬物中毒」と診断された。別の小学 
 校へ通う一時避難を始めたが、不安が募って数日で登校拒否に。同じころ、同級生
 の和雄君も持病のぜんそくが悪化するなどして学校を休んだ。まもなく、不登校児の
 ための施設に一時避難し、秋子さんも同施設に通うようになった。
   市教委の委託で同小を調査したNPO法人は昨年1月、「全児童の20%がシックハ
 ウス環境の影響を強く受けたと考えられる」と発表した。秋子さんや和雄君ら5人が 
 一時避難したほか、5人は転校。市教委などは、シックスクールへの認識と対策が 
 甘かったことを認めている。

   秋子さんと和雄君は今も理科の実験や家庭科の授業に普通には出席できず、図
 書室で自習する。教材に化学物質が含まれていることが多いからだ。香水などをつ
 けている友達にも近づけない。今春、中学に進学すれば、化粧品や整髪料などを使
 う生徒も増える。体と心の二重の傷に、将来の不安が追い討ちをかける。

 教材で頭痛、勉強に支障 都立世田谷泉高
   世田谷区北烏山の都立世田谷泉高校(生徒数約500人)では、改修した校舎で昨
 年4月にシックスクール問題が起きた。生徒8人がシックハウス症候群かCS、または
 その疑いがあると診断され、別の7人は経過観察が必要とされた。

   そのうちの一人、3年生の健一君は、化学物質の濃度低下後も頭痛や吐き気に 
 苦しむ。先月26日には、写真の授業で接着剤を使い、激しい頭痛に襲われた。授業
 中は何とか我慢したが、放課後に保健室で横になったまま起き上がれなくなり、救 
 急車で病院に運ばれた。その10日前にも、金属研磨剤を使った彫金の授業で頭痛 
を起こしている。
   昨年5月に同症候群と診断され、6月には一時入院。だが、8月に化学物質の濃 
 度が下がってからは、「授業を受けないと卒業できない」と学校側に言われて登校を
 続けている。

   同高でも調和小と同様、改修した校舎内の化学物質濃度が基準値を超えている 
状態で使用を始めており、健一君の母親は「精神的にも苦痛を受けた。学校を信用 
できない」と不満を口にする。

   健一君と同様の診断を受け、昨年5月半ばから学校を休んだ3年生の真弓さんも
 「他人の香水でも気分が悪くなる」。学校でも電車の中でも、さまざまなにおいに反応
 して症状が出るようになった。「そんなことを言ってるとキリがないから」と、9月から 
 登校を再開したが、薬品を使う写真の授業は、実習室に入るだけで気分が悪くな  
り、受けられない。「楽しみにしていたのに、悔しい」。悲しそうに、そう話した。

 発生実態把握していない国
   シックハウス症候群は、建物の建材や接着剤から発散する揮発性有機化合物を
 吸うことで、せきや目の痛み、頭痛やアトピー症状の悪化などを引き起こす。国内で
 は94年ごろから問題化した。厚生労働省は97年から化学物質の室内濃度の指針値
 を定め、13物質について設定。国士交通省も02年7月に建築基準法を改正し、対策
 を義務付けた。

   一方、シックスクールと呼ばれる、学校施設での同症候群への対策は立ち遅れて
 いる。文部科学省が学校環境衛生基準にホルムアルデヒドやトルエンなど4物質の 
検査を盛り込んだのは02年2月。同4月から、校舎の新改築の際、濃度が基準値以 
下であることを確認したうえで業者から引き渡しを受けることにした。
   また、国はシックスクールの全国的な発生実態を把握していない。文科省は専門
 家による調査研究会を設置したが、調査方法を検討している段階。NPOなどのまと 
めでは、児童・生徒らが症状を訴えたケースは、全国で少なくとも十数校に上ってい 
る。このうち都内では調和小と世田谷泉高のほか、江東区立元加賀小と墨田区立  
八広小が含まれている。




◆2004/2/11 学校シックハウスの検査 追加

  文部科学省は学校の検査項目に、新たにスチレンとエチルベンゼンの化学物質 
 を加えることにした。文部科学省は一昨年2月、ホルムアルデヒドなど4物質につい
 て教室などで室内濃度を検査し、国の指針値を上回った場合には、換気などの対
策 を進めるよう指導した。
  文部科学省が全国で50校を抽出して調査したところ、スチ  レンが277か所中
 1か所で国の指針値を上回ったほか、エチルベンゼンは指針値 にやや近い値が 
 出たところがあった。スチレンが指針値を上回ったケースは、図工 の授業で使わ 
 れた接着剤が原因だった。このため文部科学省は、これら2つの化  学物質につ
 いて、校舎の建材のほか教材などにも含まれていないか確認し、使用さ れていた
  場合は、必ず検査を行うよう各学校を指導することにしている。

◆2004/2/6 「情報開示請求が必要」 調布市教育委員会 
         我が子の健康診断結果なのに・・・シックハウスが心配

   東京都調布市の小学校でシックハウス症候群と見られる症状が児童に出た問題
 で、健康診断結果の通知を希望する保護者に対し、同市教委が個人情報の開示請
 求をするよう求めていたことが5日、分かった。保護者からは「我が子の健康診断の
 結果を知るのに、こんな事続きが必要とは」と疑問の声が上がっている。
   シックハウス症候群は、住宅建材などから放散される化学物質を吸い込むことで
 頭痛や吐き気などが起きる症状。調布市立調和小学校では、一昨年夏に完成した
 新校舎から、国の指針値を大幅に超える有害物質のトルエンなどが検出され、多数
 の児童が体調不良を訴えた。
   これを受け同市教委は大阪のNPO「シックハウスを考える会」の医師と学校医に
 委託し、同年10月と昨年3月、同10月の3回にわたり、同校の全児童に問診などの 
 健康診断を行った。
   一回目の健診後、市教委は「全校児童の約2割がシックハウス環境の影響を強く
 受けたと見られる」との結果を公表。その一方、「親に通知が必要という医師の指示
 がなかった」として、1,2回目の健診については、個別の検診結果を保護者に通知し
 なかった。
   これに対し、体調不良を訴えた計9人の児童の保護者が「病院受診のため、健診
 の結果を知りたい」と要望。しかし、市教委では「健康診断の結果は個人情報にあ 
 たる」として、開示請求の手続きを要求した。
   このため、保護者らは昨年8月から9月にかけ、市の個人情報保護条例にもとづ
 き「自己情報」の開示請求を行い、2週間後、医師が記入した我が子の「個別検診 
 表」と「所見」のコピーを交付された。請求の際、親子関係を証明するために住民票
 の提出も求められたという。
   保護者の不満を受け、市教委は昨年10月の健診後、一部児童の親に「シックハ
 ウス症候群との関連はないと思われるが、(医療機関での)早めの受診を勧める」と
 の文書を出した。だが、健診結果そのものについては、「開示請求が必要」との立 
 場を崩していない。
   開示請求した保護者(43)は、「子どもの健康を心配するのは親として当たり前な
 のに、こんな手続きが必要とはおかしい」と話す。 一昨年にシックハウス症候群と
 見られる症状が児童に出た長野県塩尻市の市立塩尻西小の場合、全員の保護者
 に健診結果を文書で通知したという。昨春、校舎から高濃度のトルエンが検出され
 た東京都立世田谷泉高校でも、健診結果を生徒本人に詳しく説明したといい、都教
 委では「一般的に、健康診断の結果は本人に情報を示すことで、健康への意識を 
 改善する意味があるのでは」と話していた。

◆2003/10/30 有機リン殺虫剤 使用規制・代替の動き
          農業・園芸・住宅など広く使用 欧米では販売縮小も

  有機リン化合物(リン酸エステル類)の多様で複雑な神経毒性が明らかになってき
 たことで、農業や園芸、防疫、住宅用などに広く使われている有機リン系の殺虫剤 
 について、影響を受けやすい子どもを念頭に規制を求める声が強まりそうだ。欧米
 の農薬メーカーの一部は有機リン系殺虫剤の販売を縮小しつつあり、代替商品に 
 切り替える動きが加速しそうだ。(辻陽明)
 =3面参照
 
  殺虫剤の中で有機リン系は安さもあって主流だ。農業用では、農薬要覧03年版の
 有効成分の原体量(国内生産と輸出入、土壌内殺虫用を除く)をもとに計算すると、
 ざっと半分を占める。日本防疫殺虫剤協会によると、防疫用でも最も多い。
 
  有機リン系殺虫剤は屋外の水田や畑、果樹園、公園、街路の樹木、趣味の家庭 
 園芸、下水の害虫駆除用のほか、屋内でもゴキブリを嫌う小売店や飲食店、感染症
 を警戒する病院や保育所、学校、交通機関などの防疫用として散布される。畳の防
 虫シートなどの住宅用もある。シロアリ駆除には80年代後半から90年代後半に多用
 された。
 
  いずれも揮発性があるので、子どもが吸い込む危険性が小さくない。
 
  一般に、食物から摂取すると肝臓である程度解毒されるのに対して、吸い込むと 
 肺を経て直接血液に入り、危険度が高くなるといわれる。
 
  農林水産省は今秋、殺虫剤をはじめとする農薬を住宅地や周辺で極力使わない
 よう自治体などに求める局長通知を初めて出した。厚生労働省は今年4月、ピル衛
 生管理法の政省令を改正、不特定多数の集まる大型ビルではゴキブリなどの進入
 経路をまず調査し、むやみに殺虫剤をまかないというルールに改めた。
 
  ただ、有機リン系殺虫剤に対する農薬取締法や薬事法上の規制が強化されたわ
 けではない。
 
  米英では91年の湾岸戦争後、帰還兵の中に有機リン系殺虫剤などによるとみら 
 れる神経障害が多発、原因究明の研究が政府主導で進み、それも踏まえて規制強
 化された。
 
  米国ではフェエニトロチオン(MEP)などの使用が厳しく制限されたほか、ダイアジノ
 ンも04年に使用禁止の予定だ。英国ではこれらが使用禁止のほか、ジクロルポス 
 (DDVP)の安全性の見直しも進められている。
 
  世界で首位を争う農薬メーカーのシンジェンタ(スイス)は有機リン系殺虫剤を世界
 的に減らすと表明、除虫菊成分の合成ピレスロイド系やたばこ成分類似のネオニコ
 チノイド系などの代替品に切り替えつつあるが、日本メーカーの動きは鈍い。
 
  一方、リン酸エステル類の一部は、壁材や家電の材料になるプラスチックの可塑 
 剤や難燃剤、ジェットエンジンの潤滑油などとしても使われている。有機リン系殺虫
 剤と似た分子構造を持つが、化合物の安全性や揮発性をめぐり議論が続いてい  
 る。



◆2003/9/30 高圧送電線:政府が至近距離の学校、幼稚園の数など公表

   政府は30日、民主党の長妻昭衆院議員の質問主意書に対する答弁書で、17万
 ボルト以上の高圧送電線(地下含む)から至近距離にある小学校、幼稚園、保育所
 の所在地(市町名)と数を公表した。高圧送電線から50メートル未満に教室のある 
 小学校は名古屋市6、神戸市1の計7校。幼稚園は名古屋市5、愛知県七宝町1の
 計6園。保育所は名古屋市4、愛知県碧南市、大阪市、神戸市、広島県福山市各1
 の計8所だった。
   答弁書のデータは、最近、配線の見直しなど変更工事の届け出があり、経済産業
 省に地形図などの資料が保存されているものが対象。このため、全体の1割程度の
 把握にとどまるが、こうしたデータの公表は初めて。

  小学校などの個別名称、詳しい住所については「学校の業務に問題が生じる」など
 ととして公表しなかった。高圧送電線から出る電磁波(超低周波)については、文部 
 科学省が小児白血病との関連を指摘する研究報告をまとめている。この点について
 答弁書は「科学的知見は明らかではない」との見解を示し、教室などへの対策は考 
 えていないとしている。

    
◆2003/6/13 江東区、学校健建材に独自基準 
         トルエン検出受け施工前に材料指定

   江東区立元加賀小学校で国の基準を超えるトルエンが検出された間題で、
 区は今後の学校新改築工事で、使われる塗料や接着剤などの材料を設計
 段階で指定する方針を囲めた。塗料や接着剤を塗ったサンプルについて、大
 学の研究所といった第三者機関に検証を依頼、安全のお墨付きを得た材料
 だけ、使用を認める。これまでは工事終了後にトルエンなどの検査をしてきたが、
 担当者は「完成した後になって『実は検出ざれた』では遅いというのが今回の反
 省点。業界任せではなく、我々がやるしかない」と話している。
   区では、すでに壁などに塗られる水性と油性の塗料など数種類のサンプルを
 専門機関に提出した。今後も、その数を増やして、使用可能な材料のリストを
 作成する。このリストに掲載されていない材料や建材は、業界の安全基準を満
 たしていても使用できないようにするという。
  今年度はすでに二つの小中学校の改修工事が予定され、落札業者が決まっ
 ているがこの二校についても随時、安全性を確認した材料の使用を業者側に
 求める。
   こうした措置を取るのは、元加賀小の改修工事で、業者が提出した書類では、
 使用されたすべての材料が安全とされていたためで、区では独自の検査が必
 要と判断した。元加賀小学校シックスクール対策連絡協議会会長で田辺新一・
 早稲田大教授は「工事の入り口の国でも例がなく、画期的だ」と評価している。
 一方、区教委は、原因特定調査の結果、改築工事に使われた建材などが原因
 と確認された場合、施工した建設業者(本社・大阪市)に対して、補修工事など
 の費用を請求することを決めた。
   調査は十二日から十三日まで。十二日は田辺早大教授や保護者らの立ち会
 いで、調査会社の社員たちが高濃度のトルエンが検出された四階の教室を中心
 に計測器を設置した。測定の結果は今月末の協議会で発表される予定。  
   区教委では調査が終わり次第、原因物質を取り除く工事や換気設備の設置を
 実施することを決めている。区教委庶務課は「原因が業者によるものと最終的に
 確認されれば、社会的な責任として業者にも金銭的に負担してもらわなければな
 らない」としている。


◆2003/5/3 シックハウス原因物質基準超過
        江東の小学校 測定結果待たずに使用

   東京都江東区の元加賀小学校で、大規模耐震工事終了後にシックハウス症候
 群の原因物質とされる化学物質、トルエンが国基準を超えて検出された問題で、
 同区が校舎内の化学物質の測定結果が出る前に業者から建物の引渡しを受け、
 児童に校舎を使用させていたことが2日分かった。
   保護者からは、児童の健康と安全を無視した行為として、批判が集まっている。
   文部科学省は、昨年2月に改訂した「学校環境衛生の基準」の中で、校舎改築
 後はトルエンやホルムアルデヒドなどの4つの化学物質についての検査を行い、国
 の定めた基準値を下回ってから引渡しを受けると定めている。
   同小は昨年夏から今年年3月まで工事を行ったが、その間、児童らは近くの廃校
 になった小学校で授業を行っていた。
   3月11日に鍵の引渡しを受け、同20日に区が依頼した民間測定会社が校長室や
 普通教室、体育館など10ヵ所で空気を採取した。
   同24日には、都の研究機関が独自に調査した別の測定結果が判明。体育館など
 で国基準を超えていたが、「新しい校舎で卒業式をしたい」という意向を受けて、卒
 業式を25日に実施した。
   4月1日には学童保育の子供たちが校舎の使用を始め、同7日に始業式を行った。
 区の調査結果が同小の校長に口頭で報告されたのは5日で、文書での報告は7日
 に入ってからだった。
   保護者の1人(42)は「これだけシックスクールが問題になっている中で、検査結果
 が出る前に子供たたちを校舎の中に入れるのはどう考えても納得できない」と話し
 ている。

◆2003/3/1 鵡川高 卒業式場を変更
         体育館 シックハウス対策進まず
          朝日新聞 夕刊より

   胆振支庁鵡川町の鵡川高は、卒業式の式場を町内の小学校の体育館に移し
 た。暖房・外壁工事を終えた体育館を検査した所、トルエンなどの化学物質濃度
 が、基準値の6〜7倍にに達した。その後も数値は改善せず、シックハウス症候
 群が懸念されたためだ。卒業式は29回目だが、校外の施設の借用は初めてと
 いう。
  一月末の検査の結果、化学物質濃度が際立って高かったのは、アリーナ部
 分。「目が痛い」「におう」と訴える生徒もいた。体育館の出入りを禁止する措置
 をとり、窓をすべて解放していたが、1週間前の検査でもわずかに基準値を上回
 ったという。このため、学校側は小学校の体育館を借りる方針を決め、急きょ案
 内状を作成した。急ごしらえ式場には校歌の歌詞が掲示され、プロ野球・日本ハ
 ムに入団した池田剛基選手ら卒業生69人が卒業証書を受け取った。


◆2003/2/6 調布発 「窓開け」懸命 「シックハウス」児童被害 
        新校舎 におい退治 親も参加
         朝日新聞より

   子どもたちが登校する前の午前7時15分。東京都調布市西つつじヶ丘の市立  
調和小学 校(児童410人)では、教頭や職員が全数室の窓を開けてまわる。冬  の
冷たい風が校舎に 吹き込む。
  調和小は昨年9月に新校舎に移った。その前後に、シックハウス症候群の原因 
物質とされるトルエンなどを指針値を上回って検出した。新校舎に入った子ども  た
ちの一部が頭痛 やせき、目の痛みなどを訴えた。市教委は先月23日、「症状 を訴
えた児童はシックハウスの可能性が極めて高い」と保護者に謝った。

 ●次々と異常
   ある母親は「子どもが『だるい』 『疲れた』と言って、学校から帰ってくるなりし  ゃ
がみ込 んでしまった」と話す。
   別の家族は、転校するため、近くの市に引っ越した。頭痛を訴えてきた子が、 体
育館を 使った日に鼻血を出すことが続いた。それまでなかったという。母親  (41)
は「化学物質は 簡単には抜けないと聞いた。次女にも目の異常が出た」と 話す。
   同校は新校舎に移って以来、窓開けを続けている。窓開け隊と呼はれる母親 た
ちも参加した。
   教室には、幅2.5b高さ1.6bの窓が2つある。寒い日はできるだけ休み時間に 開
ける。授業中は子どもたちや先生に任せる。外気を入れる一方で、冷暖房が  完備
しているので天井から25度前後の温風が出る。
 
 ●夜7時まで
   児童や保護者から「冬に窓を開けるのは寒い」の声も出る。教室では毎朝、各 担
任教論が室温をはかる。今月上旬は10〜17度だった。
 山崎敏雄校長は「その日の天気にあわせて授業中は窓を開ける部分を細くす  る」
と話す。
   放課後も、警備員がいなくなる午後7時まで窓やドアを聞けて、風を通す。山崎 校
長は「備え付けの棚がにおう」と、放課後に理科室などの引き出しを開けて歩  く。に
おいを飛ばすためだ。
   新校舎は、3階建て延ベ1万1千平方b。全教室冷暖房で、床は光沢があるフ  
ローリング。市民も使える温水プールを備える。市は「21世紀にふさわしい夢の  あ
る学校施設」と紹介するパンフレットを作った。
   だが、「寒ければ空調暖房、空気が悪ければ天井の換気扇で機械換気といっ た
設計。自然の風の通り道が少ない」とある教師は言う。教室と廊下の間はガラ ス戸だ
けで壁がな い開放的な造りだが、その廊下にある窓は大きすぎて児童  が 落ちる
心配があるといい、15センチほどし開かない。
 
 ●月内に結果
   新校舎に入る直前の昨年8月の測定で、トルエンが教室など11カ所で国の指  針
値を上回り、最も高いプレイルームは15倍近かった。ホルムアルデヒドも6カ  所で指
針値以上だった。7月はキシレンも指針値以上だった。
   市教委は、NP0法人「シックハウスを考える会」 (事務局・大阪府)に原因の  調
査を頼んだ。この団体は大阪府堺市の保育園のシックハウス問題で実績があ るとい
う。「考える会」副理事長で皮膚科医の笹川征雄さんは、昨年10月に児童  を問診し
た。「初めの約1カ月間、児童は高濃度の化学物質にさらされた。登校  を中止させ
るべきだった」と話す。保護者や教職員の努力で、現在は化学物質  の影響は薄ら
いできているという。調査結果は今月中に出る予定だ。

 シックハウス
   建物の建材や接着剤などに含まれる化学物質が原因とされ、頭痛やせき、め ま
い、吐き気など様々な症状を招くという。学校の場合は「シックスクール」とも呼 ばれ
る。文部科学省は02年4月以降に契約した校舎について、ホルムアルデヒ  ド、トル
エン、キシレンなど4物質について指針値を定めている。調和小はそれ以 前の契約だ
ったが、市教委が測定したところ、昨年の落成前後に、最高で3物質 が指針値以上
だった。

◆2003/2/3 シックスクール 新・改築校舎の建材から化学物質
        −頭痛や吐き気 問題の理解・対策不十分
          毎日新聞

   新・改築した校舎の建材などから出る化学物質が原因で頭痛、吐き気などの  症
状が起きる「シックスクール(シックハウス症候群)」が各地で問題になってい  る。シ
ックスクールに苦しむ子供たちは以前から存在したとみられるが、文部科  学省が02
年2月、原因と考えられる4物質の規準値を定めたことをきっかけに、認 知され始め
たというのが実態だ。この問題に対する理解や対策はまだ十分とは  言えず、識者
らは「このままでは、さらにシックスクールが起きる」と警告する。
 【田村佳子】

◇今年度発生した主なシックスクール事例◇
(カツコ内は規準値を超えていた化学物質)

○長野県塩尻市・小学校新築校舎(トルエン)
 児童の7割が一時体調不良を訴える

○東京都調布市・小学校新築校舎(トルエンなど)
 児童8人が転校・一時避難

○滋賀県水口町・小学校新築校舎(トルエンなど)
 化学物質過敏症の児童1人が登校不能に

○大阪府堺市・保育園新築校舎(トルエン)
 園児19人がシックハウス症候群の診断

○同市・保育園仮設校舎(ホルムアルデヒド)
 園児と保育士計26人が不調訴え。保育士4人に労災認定

○高知県大月町・中学校新築校舎(ホルムアルデヒド)
 生徒100人以上が体調不良を訴える、1人転校

○香川県さぬき市・幼稚園増設教室(ホルムアルデヒド)
 規準値を超えて検出した教室を使用中止

   「こんな思いをほかの子供たちには絶対にさせたくない」
   東京都調布市に住む母親(42)は涙をこぼした。長女が通っていた市立調和  小
学校が新築され、新校舎での授業が始まったのは昨年9月。長女は頭痛を訴 えるよ
うになり、やがて、学校から帰って来てもテレビさえ見ずに寝込むようにな  った。活
発だった子がおけいこごとも宿題もできなくなっていた。
   市教委は新校舎がほぼ完成した昨年7月、校舎内の空気測定を行っていた。 16
室中15室でトルエンが、3室でホルムアルデヒドが規準値を超え、特にトルエン は最
大で基準値の38倍に達した。
   ところが、新校舎は換気以外の対策をしないまま使われた。測定結果が保護 者
全員に伝えられたのは11月半ばだった。 母親はシックスクールを疑った。病 院を回
ったが診断規準も治療法も確立していないため、医師の対応は冷たかっ た。「このま
ま登校を続けてはまずいのでは」。将来の健康への影響も怖かった。 他校に一時避
難や転校する子供も出始めていた。昨年10月末、長女の登校を中 止させた。
   今年1月、学校側は全児童を対象に行った健康診断の結果を保護者に説明し 
た。この時、健診に携わった大阪市のNPO(非営利団体) 「シックハウスを考え る
会」副理事長の笹川征雄医師は「2割の児童がシックハウスの影響を強く受け たと考
えられる。(高濃度の検出が)分かった時点で登校を中止すべきだった」と 明言。市
教委も「開校を遅らせるべきだった。大変なことだという認識が足りなか った」と述べ
た。

 シックスクール
   建材、塗料やワックスなどから揮発する化学物質が原因でさまざまな体の不調 
を起こす病気で「シックハウス症候群」の学校版。症状はのど・鼻など粘膜の異常 や
アレルギーの悪化など人それぞれで、重症度も個人差が大きい。長期に原因 物質に
さらされると、ほかの化学物質にも過敏に反応する「化学物質過敏症」に 移行する可
能性があり、重症になると社会生活も難しくなる。
   シックスクールに関する全国調査は行われていないため、この病気に苦しむ子 
供たちの人数などは不明だ。「シックハウスを考える会」や横浜市の「化学物質過 敏
症支援センター」(横田克巳理事長)など6府県のNPOと市民団体が把握する  シック
スクールの子供は計約500人。だが、この数字は6府県にほぼ限られてお  り、実態
ははるかに上回るとみられる。
   厚生労働省は97年から、シックハウス症候群の原因となる化学物質の室内濃 度
の指針値を順次設定し、現在14物質の指針値がある。一方、文科省は02年、 学校
環境衛生基準を改定し、14物質のうち建材などに含まれるホルムアルデヒド と、接着
剤や塗料に含まれるトルエンなど4物質の基準値を設定。02年4月以降  の発注分か
ら、校舎の新・改築時には「濃度が基準値以下であることを確認させ たうえで引き渡
しを受ける」と定めた。
 新基準は、ホルムアルデヒドとトルエン濃度の年1回検査も盛り込んだ。だが、こ の
定期検査については「地域の実情に応じて」始めればよく検査結果が「著しく低 濃度
なら」次回から省略できるとした。このため「基準値以下なら翌年からは検査 しない」
という県もある。
  「シックハウスを考える会」の上原裕之代表は「測定(時期や方法)がいいかげ ん
なまま実施され、その結果が独り歩きする恐れがある。保護者が自ら知識をつ け、
行政の責任回避は許さない姿勢を見せなければならない」と語る。

 ヒノキや杉で改修 埼玉・玉川小 積極的対策 風邪をひく子減る
  積極附な対策を進めるところもある。埼玉県玉川村の村立玉川小学校を妨ね 
た。窓から差し込む光がヒノキの間伐材を敷き詰めた床に柔らかく反射する。廊 下を
歩くと、漂う木の香りが心地よい。「この中にいると心が落ち着きます」と加藤 すすむ
校長は言う。
 同小(築30年)と同村立玉川中(築25年)は00、01年、床、腰璧、天井をヒノキと杉 で
全面改修した。「シックスクールなどの問題を解決するため」だ。木材は防虫処 理を
せず、接着剤にも気を使った。トルエンなどを含まない植物性塗料を塗り、ワ ックスも
使わない。改修後、風邪をひく子供が減ったという。心理面への影響も見 逃せない。
昨年6月のアンケートでは中学3年生の半数、教職員の85%が以前よ り「落ち着い
た」 「少し落ち着いた」と答えている。
  総工費は小学校5700万円、中学絞8800万円。建て替えに比べ10分の1で済ん 
だ。「鉄筋校舎の方が木造よりストレス症状を見せる子供が多いという調査もあ  る。
環境問題を考えても、こういう学校が増えていい」と関口定男村長は力説す  る。
  このほか、仙台市は今年度発注分からすべての普通教室に換気扇を設置。東 京
都も独自の「化学物質の子供ガイドライン」を策定中だ。


◆2003/1/24 新築校舎はシックハウス、基準値上回る原因物質 調布市
 
   東京都調布市の市立調和小学校(山崎敏雄校長、児童410人)の新校舎で  昨
年9月の開校直前、シックハウス症候群の原因物質とされるトルエンやホルム アル
デヒドが基準値を上回って検出され、体の不調を訴える児童が相次いでい  たことが
わかった。調布市教委は23日、「シックハウスの可能性が極めて高い」 と発表、教育
長が保護者に謝罪した。現在、体調不良や健康不安を訴える児童 8人が、転校した
り一時的に近くの学校に通ったりしている。
   調査は、NPO法人「シックハウスを考える会」(事務局・大阪府)に市教委が依 
頼。皮膚科医の笹川征雄副理事長がこの日、「開校時、トルエンは基準値の4  〜1
0倍。ホルムアルデヒドも高く、子どもたちは1カ月間化学物質にさらされてい た。わ
かった時点で登校を中止すべきだった」と発表した。ただ、数値は一部を  除いて下
がっており、今後については「影響は少ない」とした。

  市教委によると、開校前の測定(8月17日)で、トルエンは、国の基準値(0.0 7p
pm)に対して最高で1.04ppmとなるなど16カ所中、教室内など11カ所で  基準値
を超えた。ホルムアルデヒドも6カ所で基準値以上だった。

   笹川さんは「特に過敏でなく、普通の人でも影響を受ける状況だった。基準値 は
健康な成人向けで、児童の2割がシックハウスの影響を強く受けたと考えられ る」と
述べた。 (00:11)


◆2002/8/30 トルエン基準値超えを説明せず授業・・・・長野の小学校
        読売新聞より
   
  長野県塩尻市立塩尻西小学校(寺沢勝校長、児童約380人)の新校舎で、シ ッ
クハウス症候群の原因物質の一つとされるトルエンの空気中濃度が先月末、 文部科
学省が定めた基準値の約1.9倍に達したことが29日分かった。今年3 月には数値
はさらに高かったが、同市教委や同好は保護者らに知らせないま  ま、1学期の授
業を行っていた。

   地元の開業医によると同症候群によると見られる目の以上を訴えて来院した 男
子児童がいたといい、市教委は30日、保護者会で初めて事情を説明する。

  文科省は今年2月、同症候群の原因となるホルムアルデヒド、トルエン、キシ レン
など4物質の空気中濃度の基準値を設け、4月以降、基準値以下と確認し てから新・
改築した校舎などの引き渡しを受けるよう定めた。

   同市教委は、2月に業者から校舎の引き渡しを受け、3月16日に校内11か 所で
測定を実施。空気中1立方メートル当たりのホルムアルデヒド(基準値100  マイクロ・
グラム)3か所で130−270マイクロ・グラム、トルエン(同260マイク ロ・グラム)も 
 10か所で550ー2500マイクロ・グラム以上と基準値を超え  た。

   市教委によると、フローリングの下地に使用された接着剤が原因の可能性が 高
いという。
                                      


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