◆2004/3/9 [続発・シックスクール]子供を守るために/3
危険性への認識甘く
約400人の全校児童の2割が何らかの環境影響を受けたとされる、調布市立調和
小学校のシックスクール問題はなぜ起きたのか。
新校舎内の化学物質測定で基準値を上回るトルエンなどが検出されたのは、02
年8月17日。市教委は同28日に測定結果の報告書を施工業着から受け取ったが、
「濃度は下がるはず」と判断して2学期の9月2日から新校舎を使い始めた。
新校舎は、PFI(民間資金活用による公共施設整備)方式で建設された全国初の
公立学校で、各地からの視察予定が詰まっていた。使用開始から約2週間、児童は
冷房のために窓を閉め切った教室で授業を受けた。
9月中旬ごろから頭痛や目の痛みを訴える児童が出始めたが、学校側の保護者
への最初の説明会は10月11日。「もっと早く知らせてくれたら休ませたのに」。娘2人
に鼻血の症状が出ていた母親(44)はその対応に怒り、あきれた。娘2人は転校させ
たが、「シックハウス症候群から化学物質過敏症(CS)への移行途中」と診断され
た。
一部の保護者は、子供たちの発症前の9月初め、市教委から独自に測定結果の
報告書を入手。当時の校長に対し、全保護者に配布するよう求めた。しかし、学校
側は「不安を与えたくない」などと拒否。結局、全保護者に配られたのは説明会後の
10月18日だった。
約半年後の昨年4月、都立世田谷泉高校でも同様の「過ち」が繰り返された。改
修工事を行った実習棟の全23教室のうち5教室だけで化学物質を測定し、このうちト
ルエンが基準値を超えた3教室を使用延期にしただけで授業を始めた。生徒らが体
調不良を訴えたため、5月15日に全室を測定すると、8教室でトルエンが基準値を超
えた。
シックハウス症候群と診断された3年生の健一君は、4月下旬から頭痛やけん怠
感を訴えた。母親(43)は原因が分からず動揺したが、5月半ばの保護者説明会で
初めて事情を知って憤った。同症候群と診断された3年生の真弓さんも、「危険かも
しれない教室に自分たちを入れたなんて」と学校側のずさんさに驚き、涙が止まらな
かった。
「危険性と説明責任の認識が希薄だった」。「認識が甘く、保護者にも早く通知す
べきだった」調布市教委と世田谷泉高校の担当者は、今も同じような反省の言葉を
口にするしかない。(児童生徒の名静は仮名にしてあります) =つづく
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