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***************要 望 書**************
厚生労働大臣
坂口 力 様

2003年6月10日
西ナイル熱感染拡大予防指針への要望

  私たちは、化学物質過敏症の患者や、患者の支援団体、または、化学物質による健
康被害をなくすことを目指して活動している団体です。
  貴職におかれましては、平素より、化学物質による健康被害防止などにつきご尽力
いただき、誠にありがとうございます。

  さて、報道などによりますと、厚生労働省では、西ナイル熱の感染拡大予防に係る対
応指針を策定し、近く、各都道府県へ通知するとのことです。報道では「患者発生時や
カラスなどからウイルスを検出した時は、まず10キロ四方を目安として、下水管や木の
茂みなどに殺虫剤をまき成虫を駆除。空中散布も検討する」とあります(6月3日付『読
売新聞』)。これについて、化学物質過敏症発症者の方々などから、不安の声が次々に
寄せられています。

  これまで、O157、新型肺炎など、細菌・ウイルスによる新たな感染症が問題になるた
びに、さまざまな生活の場において、効果に疑問がある過剰な量の殺虫剤・殺菌剤が
不適切な方法で散布され、化学物質過敏症の発症者たちは、激しい苦痛を被ってきま
した。

  化学物質過敏症の発症者だけでなく、喘息などのアレルギー患者、妊婦や幼児、肝
機能や腎機能が衰えている人などの中にも、重大な健康影響を受けた方々がいらした
であろうことは、想像に難くありません。

  改めて申し上げるまでもなく、感染拡大を防ぐためには、媒介昆虫である蚊の幼虫が
生息する水たまりをなくすなどの繁殖抑制が必要です。水たまりの原因となるビン、カン
などの容器類のごみのポイ捨ての取り締まり、下水路などでの水の停留防止対策や、
水路や遊水池への魚類などの天敵導入など、今すぐ準備しておくことがたくさんありま
す。また、ウイルスを媒介するのが海外から来る鳥類であることから、野鳥類について
は輸入禁止をとるとともに、密輸などがないよう厳しく監視すべきと考えます。

  さらに、このような日常的な対策をとっていても、万一、西ナイル病が発生した場合に
備えて、ワクチンなどの開発にも力を入れる必要があります。

  1999年以後、西ナイル熱の発生の見られるアメリカでは、媒介昆虫の蚊の駆除のた
めに、幼虫に対してはBT剤やメトプレンが、成虫に対しては、マラソンやレスメトリン、フ
ェノトリンなどの殺虫剤が使用されたと報告されています。
  ニューヨークでは上空から殺虫剤を撒くなどして蚊の退治をしたものの効果はなく、か
えって住民に喘息の被害が出て打ち切られたとの報道もあります(2002年11月13日付
『産経新聞』)。

  また、散布地区に生息する野生生物への影響も無視できず、ニューヨーク州が調査
した野鳥の死因は、西ナイルウイルスよりも、殺虫剤中毒によるものの方が多かったと
の報告もあります。

  殺虫剤散布が万能だとは、とても言えないにもかかわらず、対策の実施として目に見
えて分かりやすいことから、薬剤などの危険性についての認識が薄い自治体や害虫防
除業者、町内会などによって、過剰・不適切に散布される恐れがあります。

 そこで、殺虫剤散布による健康被害を予防するために、指針について下記の通り要
望いたします。



1.指針の都道府県への通知を延期する。
2.指針の作成メンバーに化学物質による健康影響について詳しい専門家を含めた  
うえ、以下の1)〜8)を盛り込むことも含めて、指針の内容を再検討する。

1)蚊の駆除を目的とする殺虫剤の散布は、西ナイル熱患者などが発生した場合に  
局所的、一時的に実施するにとどめる。
2)殺虫剤を散布する場合は、人の神経系に毒性作用を示す有機リン剤や、環境ホ  
ルモン作用のあるピレスロイド系殺虫剤を散布しない。蚊だけでなく、益虫や天敵な ど
を無差別に殺す薬剤を散布しない。
3)殺虫剤を散布する場合は、航空機や無人ヘリコプター、大型散布機など、広範囲 
に飛散し、人の健康や生態系に大きな影響を与える散布方法はとらない。
4)殺虫剤を散布する場合は、散布地域住民や、散布施設(車両・航空機・電車・船舶 
等の交通機関、公共施設、店舗、商業ビル、娯楽施設、地下施設等、不特定の人 が
立ち入る場をいう)の利用者に事前に周知し、散布中及び散布後には、立ち入り 禁止
期間を設け、化学物質に対する弱者への健康影響を防ぐよう配慮する。
5)殺虫剤散布によって起こりうる健康被害や、米国で健康被害が出た例などの情報 
を指針に盛り込む。
6)散布地域に居住する化学物質に対する弱者が避難を希望する場合は、国または 
自治体により、避難先の確保や避難先への移動などについて必要な支援対策を講 ず
る。
7)過剰・不適切な散布により健康被害が出た場合、国または自治体により、治療な 
どの必要な対策や、被害の補償を行う。
8)防除を行おうとする自治体などは、害虫防除業者などに対し上記1)〜7)について 
指導し、散布が過剰・不適切なものにならないよう徹底する。

以上

■要望者・団体(五十音順。カッコ内は団体の場合代表者等、個人の場合住所等)
アトピッ子地球の子ネットワーク(事務局長・赤城智美)・天草の海からホルマリンをなく
す会・石下 直子(横浜市)・いもづるねっと(藤原清子)・化学物質問題市民研究会(代
表・藤原寿和)・岡山パンプキンコーチ(小野田光子)・川ア 陽子(佐賀市)・健康を考え
る会(福田まちこ)・子供の環境を守る会(池田みどり)・子どもの健康と環境を守る会
(代表・黒嶋惠)・サスティナブル21(代表・小沢祐子)・CS患者会(代表・道本みどり)・
食政策センタービジョン21(主宰・安田節子)・杉山 浩子(静岡県藤枝市)・健やかな命
のための生活講座・田口 誠道(長野県丸子町・長野県の農薬空中散布を考える会代
表)・特定非営利活動法人化学物質過敏症支援センター(理事長・横田克巳)・豊橋有
機農業を考える会(水谷誠寿)・日本消費者連盟関西グループ(山崎昌子)忍頂寺 千
恵子・反農薬東京グループ(代表・辻万千子)・曳地 トシ(埼玉県飯能市)VOC-電磁波
対策研究会(代表・加藤やすこ)・フォー・ザ・チルドレン(代表・田口操)・松田 章子(石
川県柳田村)・松本基督
■世話人
特定非営利活動法人化学物質過敏症支援センター・反農薬東京グループ



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